秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
 ここ一年ほどでようやく少し良くはなったけれど、やはり体調が悪い日は起き上がれず、ひどいときは何日も食事をとれない。何度か手術なども行ったのだが母の体力が持たず、すべての治療を進められない状態が続いていた。

 母は会うといつも迷惑をかけてごめんと言うけれど、私は母が頑張ってくれたおかげでここまで大きくなった。感謝こそしているが、迷惑だなんて思わなかった。それに、四年前だって……。

 妊娠したと母に話した日の記憶が、私のまぶたに鮮やかに蘇る。

 あの日、結婚はしない。でも、この子を生みたいと告げた私に、母は『わかった。天音の思うようにしなさい』と言ってそれ以上なにも聞かなかった。

 母自身、私をひとりで生み、育てていくと決断したからこその答えだったのかもしれない。決断した当時の母にもいろいろな思いがあったのだろうから。

 そのとき、『天音を信頼しているから』と言ってくれたのが本当に嬉しかった。恵麻が生まれてからも、こうして病院に来ると喜んでくれて、とてもかわいがってくれている。

 人として強く、優しい。自慢の母だった。
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