秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
 五年前、母は突然家で倒れた。

 そのとき大学にいた私は、電話で母が救急車で病院に運ばれたと聞き、急いで母のもとへと向かった。

 そして、後日医師から、長年の過労により心疾患を患っていて、負担がかかりやすい肝臓や腎臓もかなり弱っている。これだけの症状なら以前からなにかしらの自覚症状や前兆があったはずだと聞かされたのだ。

 母はもともと身体が強いほうではなく、私が幼い頃からよく体調を崩していた。

 それでも私のために朝から晩まで働き、女手ひとつで私を育ててくれた。

 学校の行事にはあまり来てもらえなかったけれど、愛情不足だと感じた瞬間など一度もない。『お母さんは天音が大好きよ』といつも思いを口にしてくれていたからだ。

 寂しくても、この言葉と抱きしめてくれる母の温かさを思い出せば乗り越えられた。

 それなのに、私は母がこんなになるまで気づいてあげられなかったのかと、医師の説明を聞いたあと、自責の念が激しく迫った。
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