秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない

 心地良い春の宵の風にあたる。

「相良さん。今日は本当にありがとうございました」

 宴会場を出てホテルの外まで送ってくれた男性にお礼を言う。パーティーの途中で、男性の呼び名に困っていた私に気づいた彼が、『相良大和だよ』と名前を教えてくれた。

 相良さんはスマートに食事を取ってくれて、私が話の流れで甘いものが好きだというと、デザートまでゆっくり堪能させてくれた。

 緊張に加えて優しく微笑する相良さんと何度も目が合って、正直味はあまりわからなかったけれど。それでも今日は彼のおかげで夢のようなひとときを過ごすことができた。

「こちらこそ。君が付き合ってくれたおかげで楽しかった」

 そう言った相良さんが、少し離れたところに停まっていたタクシーに合図をする。タクシーはホテルの入口前にある巨大な噴水を回るようにしてこちらにやってきた。

 私たちの前で停車すると、ドアが開く。

「じゃあ……」

 私は最後に軽く会釈をして乗り込もうとする。そんな私の腕を相良さんが掴んだ。
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