秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
 それに加えて私は、余裕がなくておそらく最後にカットに行ったのは半年以上前。メイクも毎日五分もかからずに終わらせてしまい、ほとんどベースメイクと口紅のみだ。

 もともと細身だけれど、その分胸なども小さく、色気がある身体つきとは程遠い。

 比較したってどうしようもない。わかっているのに、こんな素敵な人が相良さんの奥様なんだと知ってしまうとひどく惨めな気分になった。

 ぼんやりと眺めていたせいで、ふと女性がこちらを向いた。

「さようなら」

 にっこりと会釈する女性に、私は息を呑んでから「……さようなら」と告げる。

 私の答えを聞いた女性は、男の子と手を繋いで保育所をあとにした。

「恵麻ちゃんのお母さん、お疲れ様です。恵麻ちゃんもすぐに呼んできますね」

 先ほど女性に男の子を引き渡していた先生が、今度は恵麻を呼びに保育室の中へ戻っていった。
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