偏にきみと白い春
「てか、コーヘーって優しいかー?」
「え? うん。すごい優しいと思う。なんていうか……同じ匂いがするというか」
「ふーん……」
自分で聞いてきたくせに、興味のなさそうな領。まあ、領は優しいを通り越しているけれど。そんなことは言わないでおく。
「やっぱ、やめたっ!俺、今日いなくなるのやめ!綾乃の練習は俺が見る!」
うんうん、って頷きながら足を進める領。そんなにいきなり予定変えて大丈夫なの?って聞くと、ダイジョーブって返事が返ってきた。
「ほんと?なら、よかった。領がいるとほっとするし、楽しいから」
「……俺といると楽しい?」
「うん。すごく。世界が輝いて見える」
「……俺も」
いやに真剣な声だったから、ふと私より少しだけ高い領を見上げた。
いつもの笑顔じゃなくて。もっと優しくて、もっと大切な何かを見るように、領が私を見てた。
「俺もだよ、綾乃」
その表情が、なんだか少しくすぐったくて。胸の奥が、どくんと音を立てた。