偏にきみと白い春



「んじゃー今日はここで解散なー!」


あの後、発声練習法や発音練習法とかを領に教えてもらった。あと、少しだけ曲作りを見せてもらったりして。

時間はあっという間に過ぎて、下校時刻はすぐにやってきた。


「じゃあなー!」
「んじゃ」
「バイバイ」


3人に同時にそう言われてちょっと笑えてしまった。私も笑ってバイバイ、と返す。

領とコウヘイは、何やら怜さんに耳打ちをして背を向けて帰って行った。

残された怜さんと私は2人きりだ。



「家、コッチ?」



私が慌てて頷く。怜さんも同じ方向だったのか、「んじゃ行こ」と言って歩き出した。私はその横に急ぐ。

2人で同じ道を歩く。なんだかそれは、とても気まずかった。怜さんとは、まだ2人きりの空間になったことがなかったからだ。



「れ、怜さんもこっちの方向……?」



咄嗟に出たのがそんな言葉。本当、自分でも笑ってしまうくらい不自然な会話。

この前まで、人と話すことすら避けてきた私だったのに、この沈黙が、息苦しいって思ってしまった。


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