偏にきみと白い春


「ふっ、しゃべり方よそよそしいな」



少しだけ笑みを浮かべた怜さんはやっぱりすごくキレイな人だと思った。



「いや、だって……」

「つーかタメでいーよ? 同い年なんだしさー」

「えっと、じゃあ……あ、綾乃ってよんで」

「ん。最初っからそのつもり。綾乃って面白いのなー? ウチのことは怜でいーかんね」



女の子を呼び捨てにするなんて、いつ以来だろう。怜、って、次に呼ぶ時はちゃんとそう呼べるだろうか。

領や浩平。そして怜。

はるとうたたねのみんなは不思議だ。私、いつからこんな風に人と話せるようになったんだろう。

変えてくれているのは、きっと3人が優しくて、私の方をちゃんと向いていてくれるから。



「つーかさ、綾乃に聞きたいことあんだけど」

「う、うん? なに?」

「綾乃、領のこと好きなん?」



一瞬、胸がドキッと鳴って、赤紫が混じった真っ黒なストレートロングの怜の髪を見つめた。

夕日が反射して、ますます綺麗だ。怜は派手だけど、その外見がとてつもなく似合う。



「……違うよ。……なんで?」

「いーや。そーかと思って。
違うんならいーけど。今まで領目当てでバンドやりたいとかいうヤツ何人もいたからさ」

「そ、そうなんだ…」



領が人気者なのはわかっていたけど、さすがだなあと思う。領がモテるのはわかりきっていることだけど、なんだか、胸がモヤモヤする。



「コッチは真剣にベースやってんだっつーの。そーゆーヤツらが来ると、ホント腹立つんだよね。領はお人好しでアホだから、そーゆーの気づかなくてさー」

「そっか…」



怜は、本当にバンドが、ベースが好きなんだな。不真面目そうに見えても、音楽の話をしている彼女はとても生き生きしていたから。

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