偏にきみと白い春
「うるさいなー領。ビックリするじゃん」
「なんだよいつも通りだろー!」
「……じゃ、俺今日はあや…」
「今日もおれが綾乃と合わせねー!」
浩平の言葉に領の言葉がかぶる。最近、よくあるな、こういうこと。
こうなると、絶対決まって浩平は、「ん、じゃあそれで」と薄く笑う。
その作り笑いが、私はなんだか苦手だ。
浩平は、いつも言いたい事我慢してるんじゃないかな。自分がそうだからこそ、他人のそういう部分には敏感になってるのかもしれない。
学校や家の中で、作り笑いをしたり、敵を作らないように振る舞うことは生きていく上でどれほど大切なことなのか、嫌と言うほど学んできた。
「じゃ、おまえら下の防音室なー! 俺と綾乃はここでやるからー」
「はいはい」
「領、綾乃にヘンなことすんなよ?」
「なにそれ! 信用ないな! しないから!」
怜が睨みをきかせると、ホントホント!って領がグイグイと2人を外に追いやった。浩平は珍しく声を出して笑っていたけど。
領のギターにあわせて、歌を歌う。
これが最近の日課だ。