八木澤くんは不器用に想う
人だかりの中心には、
茶色の、ウェーブがかった長い髪を揺らす女の子が。
「翼くん、ここがA組の教室?」
「そうだよ。
A組に用があったの?」
「うん。そうなの」
女の子の隣には、短髪で爽やかそうな男の子が。
その姿を見るなり、莉子ちゃんがガタッと立ち上がって。
「……翼」
「あっ莉子!
A組にいたんだ!
昼休み入るなりどっか行っちゃうから心配してた」
翼って呼ばれた短髪爽やか男子くんが、莉子ちゃんに駆け寄っていく。
それを、隣にいた女の子が、翼くんの腕に抱きつく形で阻止した。
「待って翼くん。
まだ学校案内の途中だよ?」
「え、オレ莉子探すついでに受けただけだし。
オレの用は済んだから今から別のヤツに頼んでくんない?」