八木澤くんは不器用に想う








放課後。



もうすぐ柳さんが来るだろうと思って、


授業が終わるチャイムが鳴った瞬間、隣の席の八木澤くんに「あのっ」って声をかけた。




「…なに?
もう帰るんだけど」




昼休みから、機嫌が悪い八木澤くん。


私と話したくないのか、無視して教室を出ていこうとする。



それでも引き止めようと、八木澤くんのカーディガンの裾をくいっと掴んだ。




「……なんだよ」



「……」



「言いたいことあるならさっさと言えよ」




そう言う声は、


ちょっとだけ、優しい気がする。




「……なぎ、さんと」



「なに?」





「柳さんとばっかりいるから…
……寂しい…です…」




八木澤くんの顔を見て言ったら



八木澤くんが、バッと顔を隠した。




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