八木澤くんは不器用に想う
*
放課後。
もうすぐ柳さんが来るだろうと思って、
授業が終わるチャイムが鳴った瞬間、隣の席の八木澤くんに「あのっ」って声をかけた。
「…なに?
もう帰るんだけど」
昼休みから、機嫌が悪い八木澤くん。
私と話したくないのか、無視して教室を出ていこうとする。
それでも引き止めようと、八木澤くんのカーディガンの裾をくいっと掴んだ。
「……なんだよ」
「……」
「言いたいことあるならさっさと言えよ」
そう言う声は、
ちょっとだけ、優しい気がする。
「……なぎ、さんと」
「なに?」
「柳さんとばっかりいるから…
……寂しい…です…」
八木澤くんの顔を見て言ったら
八木澤くんが、バッと顔を隠した。