素直になりたい。
「おはようございまーす」


と繰り返し大声を張り上げていると喉がからっからになる。

飲み物でも買ってこようかと思ったその時だった。


「なんか飲み物買ってこようか?」

「えっ...」


ベストタイミング過ぎる。

なんだ、分かってるじゃん。

なんてぬか喜びしてる場合ではない。

私は冷静さを保ちながら言った。


「お茶お願いします。お金はあとで...」

「お金なんていらないから。んじゃ、買ってくる」


あ、行った。

よくよく見れば、足も速い。

確かに、小学生の時、櫻庭はリレーのメンバーだった。

大抵はアンカーで、赤いハチマキしてひゅんひゅんと走っていた。

回りを寄せ付けない圧倒的な速さで、それはもう会場中が彼だけを見ていた。

児童も先生も保護者も皆釘付けで、

ひたすらにカッコいいを繰り返していた。

だけど私だけは複雑な心で彼を見ていた。

カッコいい。

確かにカッコいい。

でも、見た目だけ。

中身は人をバカにして

容姿をいじめてくるような

最低最悪な悪魔だ。

そう思ってた。

けど、この前...

少しだけあの揚げパン事件で見方が変わった。


あいつは...

櫻庭は...

そんな腐ってる人じゃない。

本当は真っ直ぐで

ただ少し

不器用なだけなのかもしれない。

なんて、

そんなことを思ったりもした。

本当にちょっと。

ほんの数ミリだけどね。

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