素直になりたい。
「はぁはぁはぁ...」


息を切らしてやってきたのは、地元の公園だった。

ここで踊ったあの夜を私は忘れることなんて出来なかった。


「櫻庭っ...。はぁはぁはぁ...。んはぁ......はぁはぁ......はぁ...。櫻庭~っ!」


叫んだって聞こえるわけがない。

近くにいないのだから。

櫻庭はいなかった。

いてほしかった。

ただ、会いたくて。

ただ、伝えたくて。

今までずっと押し殺してきた気持ちが、

押さえられなくなって、

会いに来たって、

素直に...

素直になって、

言いたくて。

言いたくて...。


「ぐすっ...ぐすっぐすっ...」


私は地面にしゃがみこんだ。

体を丸めて暖めながら、

体温より暖かい涙を落とした。

泣いたって、

もう来てはくれないって

そう分かっていても

泣くことを止めることは出来なかった。

だって、私の涙は...

あなたへの気持ちで

いっぱいだったから。
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