素直になりたい。
「えっ...」


思わず絶句してしまった。

マフラーに顔をうずめ、帽子とマスクまで装着してきて、寒いところに行く準備はばっちりで気合いも充分だったのに、一気に血の気が引いた。

夏の時と同じ場所に行ってみるとそこには......


「直禾ちゃん、来てくれて良かったぁ」

「ほんと、来ないかと思ったよ~」

「わたくしの手にかかれば何のその。人っ子1人の心を動かすのは容易いご用です」


生田くんに、千咲ちゃんに、結実。

見慣れた顔が出迎えた。


「えっと、これで全員だよね?」

「そんなわけないでしょぉ。もちろん、彼も呼んでるよっ!」


いたずらっこみたいな笑み。

それは今要らない。


「何で呼ぶの?何があったか分かってるの?!」

「まあまあ、そんなこと言わずにぃ。ほんとは会いたかったんじゃないのぉ?」


うんうんと千咲ちゃんまで頷く。


「ちょ、ちょっとそれはない!絶対にないから!」

「おいおい、女子たち落ち着いて。来たよ、最後の1人」


今回もまたリュック1つで来るのかと思ったら、ガラガラと音がする。

私は背中を向けたまま、その音が止まるのを待った。

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