素直になりたい。
櫻庭と日下さんは私と天羽くんの席の2列前のど真ん中にで座って見ていた。

私は映画が始まっても、全く心が波立たなかった。

そもそも、映画の内容にも興味がなかったというのもあるけど、

それよりも...

気になって仕方がなかった。

視線はずっと右斜めを向いている。

興味がないのか、櫻庭はずっと首をこっくりこっくりやっている。

その隣の日下さんはいとおしそうに櫻庭を見つめ、たまに頭を撫でていた。

色々あったって言ってたけど、

きっと1回別れて

また付き合うことになったんだろうな...。

何それ...。

少女マンガ?

この映画より、面白いじゃん...。

はぁ、なんだろ。

ぎゅーっとぎゅーっとぎゅーっと締め付けられて痛い。

痛くて痛くて

苦しくて苦しくて。


この波が収まるようにと願って、

胸を押さえながら、

私はじんじんと痛み、

真っ赤になった爪先を見つめていた。
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