i -アイ-

佐伯蓮side





俺の斜め後ろを歩いていたはずの藍人が、俺より前に来て、気付いたら階段を転げ落ちて行った。


俺が声をかければ、ゆっくり息をしながら穏やかな声で俺に指示をする。


その声と同じようにじわじわと広がっていく血溜まりに、血の気が引いていく。


そんな時でも俺らの身を案じる藍人。

そして、申し訳なさそうに笑って意識を失った。



「……待ってろ」



俺がパニクってどうする。


保健室に先生が居なくて、職員室に飛び込む。



「階段から生徒が落ちました!!!保健の先生居ますか!!!」



そこから保健の先生やらほかの先生も来て保健室までストレッチャーで運ぶ。


救急車が呼ばれた時、



「槙野です。総合病院の鍵田先生がこの子の主治医です。私が引率してもよろしいでしょうか」



この間、タバコを吸いに来た先生。

主張が強い感じじゃないのに、そこでは誰よりも頼もしく見えた。


槙野先生と話した時は、その内容を伝えて欲しい。



そう藍人が言っていたのを思い出した。


この人を信用していいのか?

でも、藍人の主治医まで知ってるのは…。



「……もしもし、俺です。藍が」



救急車に入っていく時、そう通話をしているのを聞いた。


今、藍、って呼んだか…?




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