i -アイ-




1番奥のテーブルに座る男2人。

薄めの色のサングラスに口ピ。

まゆなしスキンヘッド、頭に刺青。


「貰いに来た」


ただそう一言だけ。


「見たことねえ顔だな」


スキンヘッドがあたしの周りをウロウロする。

仕舞いには髪を触って匂いを嗅ぐ。


「名前は」


「アリス」


「聞いたことねえな」


「アリス……」


薄暗い部屋から声が聞こえる。


ギシッとベッドが軋むような音が聞こえ、足音が近づく。


サングラスのやつとスキンヘッドのやつが立ち上がり、あたしの後ろに立つ。


「お前、アリスって言ったか」


出てきたのはあたしより少し背の高い細身の男。


黒のタンクトップを着ていて、見る限り全身に墨が入ってる。



「うん、言ったよ。ほら、お金は持ってきたから、ちょーだい」


封筒を摘んで振る。


「はっ、ここにはねえな」

笑う渋木。

きっと、こいつが渋木。

見せてもらった写真とは別人のようにコケているけど。


「嘘つかないでよ。早く出して。ここに来れば貰えるって聞いたの。早く」


イラついたように言えば、近づいてくる渋木。


あたしの腰に手を回し、引き寄せる。

……当てんな、この野郎。


「その顔、そそるな」



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