i -アイ-




「あなたを守ります」


そんなこと、初めて言われた。

俺は守ることに必死で、自分を守ってもらおうなんて考えたこともなかった。



彼の目的が結局なんなのかは分からない。


俺は結局どうするのが正解なのか分からない。

昔も今も、何も変わっていない。


俺が守らなきゃいけないものは一つだけ。


……けど、亮達の守りたいものも守ってやらなきゃいけないよな。



ああ、俺がひとつ守ったとして、残りのものは彼にお願いしようか。


体の震えが止まらない。



「怖い?」



胸の中で眠る藍人が俺を見る。


ああ、無くしたくない。


何故無くしたくないものばかり増えるんだろうな。



こんなこと、榛人に出会ってからだ。



「大丈夫。あなたはもう何も無くさないから」


欲しい言葉をふた周りも年下の彼が呟く。


「言ったでしょう。俺はあなたを守る。あなたが守りたいものも守るから」


ゆっくり、瞼を閉じる。


「藍人、ありがとう」


藍人は何も答えない。

それでいい。

榛人なら上手くやるんだろう。

頭も良くて人の心に聡くて、いつでも周りに人がいる。


無口で無愛想な俺とは大違いだ。


榛人、お前にお願いなんかしたことはないが、これだけは頼みたい。


榊のガキども、守ってやってくれ。



榊の大人共がどう動くかは分からないが、どう動くんであれ、俺のすることは決まってる。


そして、久遠藍人、君がどう動こうが、俺のすることは変わらない。



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