i -アイ-




ガラガラバサッ



階段の踊り場から、物音がした。



俺と藍人で見ると、白衣を着た人が画材のようなものをぶちまけていた。


「大丈夫ですか?」


藍人は急いで階段をおり、拾い始めた。


「ああ、ごめんね。やっちゃった」


俺も手伝いに行き、拾う。

確か、美術の槙野って教師。


「美術室まで手伝いますよ」


そう笑った藍人の言葉に顔を上げた槙野。


「本当?ありが……」


そこまで言って、固まった。


少しずつ目を見開く。


手に持った画材をまたぶちまける。


その様子に、俺らも固まる。


「……はる、と」


槙野は、藍人を見てそう呼んだ。


何言ってんだ?この人。


「……えっと、俺は藍人、ですけど」


藍人も困惑している。



「あっ、ごめん。俺の友達に似ていて、驚いちゃって。」


槙野はそう言って画材を拾う。


「美術室って、どこでしたっけ?あ、滝谷、先に図書館行ってて。」


「……おう」


いつも通りの藍人。


けれど、少し違って見えたのは俺だけなのか。


< 55 / 457 >

この作品をシェア

pagetop