物事は計画的に。

車に半強制的に詰め込まれ、たどり着いた先は趣のある料亭だった。 
この街に生まれ育って20年は経つがこんな立派な料亭があったなんて初めて知った。
成人式の際に二人からプレゼントしてもらった朱色の総絞りの振り袖に身を包まれて、美容室で綺麗にヘアメイクをされているのにも関わらず場違いな気がして、足が怯んでしまう。
引きずられるように敷居を跨ぎ、部屋へ案内され襖を開ける。

「こんにちは、宮下 岳と申します。
 本日は貴重なお時間をありがとうございます。」

とても丁寧な挨拶に謙虚な姿勢にドキッとしてしまった。
ああ、なんて真面目そうな方。
相手が私で申し訳なく思い先ほどとは別の意味で帰りたくなる。

「椿ちゃん、こんにちは!
 先日は椿ちゃん抜きで会っちゃったの。
 ごめんなさいね。
 今日は岳とたくさん話してね。
 今後のこと」

「こんにちは。
 ご無沙汰してます。」
"今後のこと"の後にとびきりのハートマークを付けながら岳さんのお母様に言われた私。

既に到着していた宮下さんと宮下さんのご両親。
とても丁寧なご挨拶に若干感動を憶えながら私たちも挨拶をした。

「後はお若い二人で」
テンション高めの両親はどうやら宮下さんのご両親とお友達関係だったらしい。

先に言ってくれないかな。
何故こうなったって四人が友達だから話がトントン拍子に進んだって事じゃないか。

そんなテンション高めの両親四人を冷めた目で宮下さんに気付かれないように、少し呪ってみた。

「僕はこの話、進めようと思ってます。
 椿さん、僕と結婚してくれませんか?」


ナニゴト?

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