昨日までを愛せますように。
「……ねぇ……、」

ただ漠然と子供達を眺めていたので、急に話をかけられて、ビクンと体が反応した。

目の前には、知らないスーツ姿の男。

細身の長身で、切れ長の瞳に黒ぶちの眼鏡をかけている……。

一体、何の用なんだ─────?

「……タバコ持ってない?」

タバコ?

持ってなくはない。

ただし、1ミリのメンソール。

「……1ミリのメンソールなら……」

バッグを開け、タバコと携帯灰皿を取り出す。

この公園には灰皿はない。

「アリガト……」

礼を言って、男は隣に座った。

無言のまま、時は流れる。

男がタバコを吸いおわり、灰皿に収めると話し始めた。
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