湿気た愛
「そうか」

その相槌で、もっと話していいと解釈した私は都合が良すぎると言われるかもしれない。

今度はわたしがここに来た経緯を話すことにした。


「わたしはあの朝、ママと喧嘩して出てきちゃったの。

ママはずっと再婚相手の男の人と遊びに行ってて、わたしはずっと家で勉強してて。

ママの作ったごはん、これがすっごく美味しいんだけど、朝食べてる時に言い合いになっちゃって。

ママは私がいっぱい勉強していいところに就職して欲しいの。
ママはお金がだいすきだからね。

それがいい加減嫌になって、勉強しなさいねって言いながら再婚相手と出ていったママを見送ってから、私もすぐ家出しちゃったの。

流行りのカフェに入って美味しいランチを食べたりして充実してたんだけど。
なれない場所を一人で歩いてたら、カイのお姉さんに声掛けられちゃった。

いつもならついて行かないんだけどな。
自暴自棄って怖いね、こんなことになるなんて思わなかったの」


カイは何も言わずに私の話を聞いている。


「そうか」

話し終わったと思ったら相槌を打つ。

私たちの会話はそれで十分だった。
寧ろ、それを求めている私がいた。

早く落ち着かせて欲しい。

カイは、その願いを叶えてくれるようで。

「眠くなってきた、かも」

「布団、使いな」

「…うん」

こうして終わった1日。
まだ監禁1日目。
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