王女ちゃんの執事3『き・eye』男の娘、はじめます。
「大丈夫か?」
 しゃがんで町田の肩にふれるやいなや、しがみついてきたのは虎。
 吾川の無礼を叱り飛ばすどころじゃない。
 へたれ弟の世話優先。
 しがみついてくる虎を、まずなだめにかかったおれは木村の背中を見た。
「吾川おまえ、いいかげんにしろよ」
 ふたりを吾川のカメラから守ってくれる男気あふれる背中。
 つまり、町田をぶちのめした〔ダメ色〕は木村じゃない。
 木村は平静だ。
 それじゃあダメなのは、好きな男をホモの三角関係とかクラスメイトに言われちまった足立か?
 いいや、もう、この際おれでも驚かねえ。
「きゃー。すごいすごい。こんな構図、頼もうったって思いつけないよぉぉぉ」
 ジャッジャッジャジャジャ
 こりない女のスクープ連射。
 吾川最強。
 地球最後の日でも生き残れ。

 自分まで被写体にされたことに茫然とするおれの腕のなかで、虎の身体は柔らかくとろけてきた。
 虎はもう落ちついている。
 抱いているから、それはおれにもわかる。
 わからないのは町田だ。
 町田はひくひくと眉をひそめて虎を見ていた。
 というより凝視。
「兄ちゃん……」虎がおれの腕を揺する。
「あのひと、きらい」
 わかった。
 うなずいて立ち上がると足立がもう吾川の腕を引いていた。
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