王女ちゃんの執事3『き・eye』男の娘、はじめます。
「吾川さんがちゃんと加藤くんを理解したいっていうから連れてきたけど。木村くんは同性愛者ではないと思うし。こんなのも、なんか…違うと思うわ」
 それは、木村以外はホモだってことか、足立ぃ。
 つっこみそびれたのは木村が笑ったからだ。
「二股じゃねぇなら、いいや。おれらじゃまみたいだし、帰ろうぜ足立」
 持て木村。おまえもかっ。
「おら! 帰るんだよ、吾川っ」
「えー。木村、横暴」
 吾川の足を蹴りつけるまねをしながら、木村がドアへと移動する。
「ごめんなさいね、町田くん、弟くん。おじゃましました」
 なぜ、おれには謝らんのだ、足立ぃぃ。
 吾川を蹴りだしたドアを押さえて待つ、ジェントルマン木村に熱視線を送って足立も退場。
 虎に抱きつかれて動けないおれに
「じゃ」と手を上げた木村が口に拳を当てて吹きだした。
「加藤が兄ちゃん……。笑けるっ」
「――――ぅ」
 てめ、木村。
 それは、どういう意味だ。
 おれはこれでも兄歴15年だわ。
 りっぱに兄だわっ。
「…………」
 …そうでもねえか。
 笑いながら出て行く木村の背中に一矢(いっし)もあびせられず。
 しおれていたおれの心を完全にへし折った虎のひと言。
「もしかして、一海さんとつきあってるの? 兄ちゃんもゲイなの?」
「…………」
 も、って?
「兄ちゃん…ずるいよ。それでも友だちいるなんて」

 No…ooooooooo!

 心で叫んだことは町田には伝わった。
「虎くんに、お昼食べさせて。ちょっと、お話…しましょう」
 ……おぅ。

< 14 / 44 >

この作品をシェア

pagetop