真夜中のサイコパス
(私にはわかる。

須藤拓実が好きな女子はお前じゃなくて木村菜々子だ。

あいつがいる限り、お前の恋は成就しない。

だけど、よろこべ。

私が木村菜々子を排除してやる。

お前の体を乗っ取って)


「止めて……」


私は頭の中に響く浜中美澄の声を聞きたくなくて、両手で耳を塞いでいた。


そして浜中美澄の声がまた私の頭の中で響く前に、自分の気持ちを早口で叫んでいた。


「もう私の中から出ていって!

私はあなたになんて支配されたくないから!

私は私なの!

私は私なの!」


浜中美澄に支配されている私は私じゃないし、浜中美澄の言葉で勝ち取った恋も、ホンモノの恋じゃない。


やっぱり私は間違っていたんだ。


里山高校の都市伝説に出てくる浜中美澄の幽霊は、私を幸せにはしてくれない。


浜中美澄の本当の顔は、友達を猟奇的なやり方で殺してしまうサイコパスだ。


浜中美澄という存在は、たとえ友達だった相手でも、容赦なく傷つけることができるのだ。


だから私は自分の体を浜中美澄とは共有できない。


彼女が私の中にいる限り、私の未来はめちゃくちゃになる運命なのだ。
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