キミから「好き」と、聞けますように。

「せっかくこんだけ屋台あるんだから、何か食べなきゃもったいないよねー」



花火大会が開かれる場所へ着くと、もう人と屋台でいっぱいだ。



「そうだねー」



「紗雪、なに食べたい?」



「ひなは食べたいもの考えてないの?」



「んー、なんていうか、たくさんあるし、どれも見ただけで美味しいってわかっちゃうから迷うんだよ。だからさ、紗雪! 選んで!」



「えっとじゃあ……」



見回すと、綿菓子の屋台が目に止まった。

いろいろなデザインの袋が下がっていて、見てみると屋台のお姉さんがお客さんの相手をしている横で、おじさんが綿菓子を作っている。


おじさんの手にしている棒がクルクルと回ることで、どんどん綿菓子は膨らんで大きくなって、美味しそうになっていく。


あの時、いろいろと考えちゃう時もそうだった。



『そういえば東條くん、甘いの苦手なの?』



『いや、好きでも嫌いでもないよ。フルーツとかは割と好きだよ』



あの会話の後にしてしまった妄想。


ふわふわと妄想が膨らんでいって、まるでああいうふうに、割り箸をくるくると回していたら、あっという間に大きくなる綿菓子みたいって思った。



「ん? 綿菓子?」



「ハッ!」



ひなの言葉で、わたしは我に返った。

そうだった、今は何を食べるか考えていたところだったんだ。




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