夕日を纏わば衷に綻ぶ
「俺、天堂 夕陽って言います」
「……知っています。名前、書いてあったので」
「あの、ほかの店員さんからキエって呼ばれてるのって、下の名前ですか?」
「そうです。天道 綺瑛 ……ドウは道なので 貴方とは少しだけ漢字が違うんですけど」
「俺、今18歳で。隣町の高校に通ってて」
「私はついこの間20歳になりました」
「あの、一応俺高校生なので。その特権っていうのもあれだけど、運命とか簡単に信じちゃうんですよ」
「夢があっていいんじゃないでしょうか」
「同じ苗字、って」
「……運命だと思いますよ、私も」
「あの、綺瑛さん……と呼んでいいのか分からないんですけど、」
「ふ、いいですよ。好きに呼んでいただいて」
「綺瑛さん」
ふわり、ゆらり、ほろり、
こころが綻んでいく。
「───俺、綺瑛さんのこともっと知りたいです」
やっぱりこれって、そういうあれだった。
それでいいような気がしている。そんな感じで、曖昧なまま始まるのかもしれない。
恋って、なんかそういう感じみたいだ。
夕日を纏わば衷に綻ぶ〈完〉


