契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました


 なんの前触れもなく、出がけに奪われた唇。

 あの少し前、そんなシチュエーションを勝手に妄想して自爆した私は、まさか本当にキスをされてしまうなんてこと考えるはずもなかった。

 ただただ驚いて、怒ることも抗議することもないまま、逃げるように玄関を飛び出していた。

 その日は、気が緩めばそのことで頭がいっぱいになってしまい、仕事中にも何度も七央さんのことを思い出してしまった。

 あのキスに、間違いなく深い意味はない。

 七央さんみたいな人にとったら、きっと大した行為ではないということで……。

 それを証拠に、あれから一週間が過ぎているけれど、その後七央さんが私に同じようなことをする気配はない。

 寝室を共にした日も数日あったけれど、各々ベッドの端同士で勝手に眠っている感じだ。

 私はいまだ思い出してしまう時もちょこちょこあるけれど、七央さんのほうはもう忘れてしまっているかもしれない。

 それくらい、彼は私に普通に接してくる。

 だから私のほうも、あまり深く考えないで夢だったのかもしれないくらいに思うように心がけるように最近している。

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