契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました


「終わる? どうして、急にそんなこと──」

「契約結婚なんてやめても、七央さんは十分幸せな結婚ができるってわかったから」

「どういう意味だ?」


 真意を求めるような、七央さんの鋭い視線が突き刺さる。


「私なんかじゃなくて……ずっと、七央さんだけを見てきた美鈴さんがいるじゃないですか」


 意識とは別で声が震えてくる。

 ここまではっきり言えば、もう私がでしゃばる必要はない。

 あとは、当の本人たちの問題だ。

 それ以上はもう言葉が出てこなくなって、逃げるようにその場を離れていく。

 今日は逃げてばかり。

 美鈴さんからも逃げるように立ち去ったし、七央さんからだってこうしてまともに顔も見れずに逃げてしまった。

 足早に自室へと入ってドアを閉めたと同時、なぜだか一粒涙が頬を伝う。

 なんで涙なんか出てくるのかわからないけれど、また一粒、もう一粒と頬を濡らしていった。


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