契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました


 満月の夜はお産が多い。

 学生の頃は、それは迷信のようなものだと思っていたけれど、実際働き始めて身を持って実感した。

 本当に満月の夜は出産率が高いのだ。

 ただ、これに関しては科学的なことは未だ証明されていない。やはり、出産というものは神秘的なものなのだろう。


「まぁ、沖縄旅行は終わっちゃったけどさ、次の楽しみ決めてまた仕事頑張ろうよ。あ、スイーツ食べに行こうよ、スイーツブッフェ」

「えー、またスイーツ? 佑華ほんと好きだよね。それなのに太らないのが意味わかんないよ」

「そんなことないよ。体重やばくなってきたら米を減らす」

「え、スイーツやめるんじゃなくて米をやめるんかい」


 そんな気心の知れたボケツッコみを繰り広げていた、そんな時だった。


「お客様の中に、医師の方はいらっしゃいませんでしょうか?」


 ドラマの中で聞いたことのあるようなセリフを言いながら、客室乗務員が通路を足早に歩いていく。


「え、具合悪い人でもいるのかな?」


 亜紗美が耳打ちをしてきて、客室乗務員が去って行った通路の方を覗き込む。

 野次馬根性丸出しな亜紗美の腕を、「ちょっと、亜紗美」と引っ張った。

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