契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました


 もしかしたら、顔には出ないものの結構ワインで酔っていたのかもしれない。

 その勢いで聞いた……もしくは、相手を間違えた?

 だから酔いが醒めてから連絡先を交換したのが私で、〝まずい、間違えた〟なんて思ってたり……。十分に考えられることだ。


「ああっ、塗りすぎ」


 ぼんやり考えながらクリームを塗っていたら、いつもの倍の量クリームを使っていて脚も腕もテカテカになっていた。

 小さなため息をついて蓋を閉める。


「ごはん食べよ……」


 重い腰を上げてソファーを立ち上がった時、置いたスマートフォンの画面が点灯した。


「えっ」


 見下ろした画面に思わず声が漏れる。

 どかっとソファーに座り直し、スマートフォンを手に取った。


 来た……。


 トークアプリの通知に出た、桐生七央という名と、【こんばんは】から始まるメッセージ。

 タップしかけて、自分にちょっと待ったをかける。

 届いてすぐに既読がついたら、待ち構えてたみたいに思われそうだ。

 そんな変な見栄から、そのままスマートフォンを元の位置に置き直す。

 食べようと思って用意していた煮込みハンバーグと、作り置きの副菜を食卓に用意し、いつもより早いスピードで食事を済ませた。

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