破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします ②【11/25コミカライズ完結記念番外編追加】
「アーシェ……ここ、どこ?」

「今のところ、鍾乳洞ってことしかわからないの」

「鍾乳洞……なんでそんなとこに……。あのミアってぶりっ子と俺様騎士にお祝いしてもらうんじゃなかった?」

 ノアが出したミアの名前に、アーシェリアスはハッとする。

(ミアが嵌めたなんてことは……。ううん、そんなのさすがに無謀だわ。だってザックとエヴァンさんがいるのに)

 ミアがザックの正体に気付いているかは定かではないが、アルバートの態度を見れば迂闊に手を出していい相手ではないことくらい想像できるはずだ。

 加えてエヴァンは王立騎士であり婚約者アルバートの同僚。

 こちらも下手に巻き込むにはリスクがある。

 だからきっと、ミアが関わっているなんてあり得ないだろう。

 であるとすれば。

「御者さんが何者かと繋がっていて、事件に巻き込まれた……?」

 アーシェリアスが可能性を考えながら口にした直後。

「おお、ご明察だ」

 野太い声と共に拍手する音が洞内に木霊した。

 洞窟の奥から現れたのは、背の高い、ぼさぼさの頭を乱雑にひとつにまとめた男。

 その少し後ろを下っ端らしき男がひとり付いて歩いている。

(あの顔……御者の人だ)

 アーシェリアスが緊張に唇を引き結ぶ。

「気分はどうだい、お嬢さん方」

 ぼさぼさ頭の男が日に焼けた浅黒い顔に不敵な笑みを浮かべ、鉄格子の前に立って腕を組んだ。

「で? スタッピー。どのお嬢さんが依頼のあった女だ?」

「それが、予定だとひとりだったんですが、どうにも増えてまして」

 ハスキーな声が腰を低くして答える。
< 80 / 232 >

この作品をシェア

pagetop