転生悪役令嬢のお目付役

「これほどまでに美しいジュリーに、会いたくない殿方がいようものか。しかし、今回はフィリップ王子とふたりでいたところ運悪く雷に打たれた。不審な点がないか、事情を聞きたいのだろう。それにしても、長らく眠っていて目を覚さないかもしれないと……」

 自分の世界に浸り始めたグラフィス卿は放っておいて、私が取るべき行動を頭の中で整理する。

 フィリップ王子とジュリアン嬢、ふたりは親同士が決めた許嫁。十五歳の頃、トラブルに巻き込まれ、そこからジュリアンはフィリップ王子に執心となり、逆にフィリップ王子の心は離れていくきっかけとなるはずだ。

 この面会、本編が始まる前とはいえ、重要な局面だわ。

 大好きな作品のなりたかった人物になれた喜びから、ワクワクが止まらない。

 位の高いフィリップ王子のところへは、公爵令嬢とはいえ、ジュリアン嬢の方から出迎く。

 ゲーム後半、『会いたいのでしたら、王子自ら訪ねてきていただきたいですわ』と言う場面を思い出し、清々しい気持ちになる。

 名台詞はそのときのために、取っておかなくちゃ。
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