初恋物語~大切な君へ



私達は家を出て駅へ向かった。
土曜日の最寄り駅は人が多く賑わっている。
何気なく当たり前のように私…
兄ちゃんの横に並んで歩いてるけど
兄ちゃん結構人気でモテるんだよね。
今も通行人の女性の人チラチラ見てたし。
そう言えば兄ちゃん、彼女いるとかの
噂すらないし好きな人とかもいないのかな?
それか内緒で兄ちゃん付き合ってる人いて
隠してるとか?
それとも好きな人がいるけど私や美桜には
言ってないとか?

私は考えながら右の親指を顎の下にあてた。






「雫、危ない!」



「えっ?」


私が気付いた時には兄ちゃんの胸の中に
引き寄せられていた。
その次の瞬間、凄いスピードで走って来る
車が一瞬で私達の横を通り過ぎて行った。




「危ねー。」
「大丈夫か雫?」



「あっ…うん」
「兄ちゃんありがとう。」



兄ちゃんの心臓の音が聴こえる。
ドクンドクンっと波打つ。
毎日兄ちゃんを見てるけど、改めて
兄ちゃん…大人の男性になっていた。
胸板がガッチリしていて引き寄せた時の
腕の力が強くて…昔の知ってる兄ちゃんが
更にかっこよく見えた。



「兄ちゃんもう大丈夫だよ。」

私は兄ちゃんの胸から離れ、再び
最寄り駅へ歩き出した。







俺は咄嗟に雫を俺の胸へ引き寄せた。
なにか考えながらフラフラ歩いてる雫が
危なっかしく思っていた矢先、
猛スピードで走ってくる車が見えこのままでは雫が引かれてしまう。
何としてでも助けなければと思い咄嗟の
判断だったけれど…
いざ雫が俺の胸に入った瞬間とてつもなく
ドキドキが止まらず隠すのに必死になっていた。
雫が俺の胸に来る時のふわっとなんの
力も入ってなく綿菓子のように軽い雫を





「ねぇ、兄ちゃん」



「何?」




「さっき考えてたんだけど」
「兄ちゃんにさ全然女性の噂聞かないけど」
「兄ちゃん片想いの人でもいたりするの?」



雫!?
なんなんだよ!急に!
なぜ知りたがるのだろ…。
何を思ってそんな事聞いてきたのだろう。
それに図星を突かれた。

片想いの人か…。
まぁ片想いだよな。

雫の事大好きだ。
妹ではなく異性として愛おしく愛してる。
でもそれは決して口にはできない。
だから片想いなのかもな。
このまま俺の気持ちがバレずにこうして
妹として俺の傍に居てくれれば
それだけでじゅうぶんだと思ってる。
そう…今のこの時までは…。
< 13 / 155 >

この作品をシェア

pagetop