初恋物語~大切な君へ
吉川颯太そう呼ばれる男子は私達と
同じ1―3組のクラスメイトらしい。
私はあまり他の人達を気にしていない。
とにかくあまり美桜や兄ちゃん以外は関わりたくないから目立たない格好を
しているのもその理由の一つである。
中学生の時のような壮絶な嫌な思いは
したくない。
高校に入ったら地味で目立たなくなれば
妬みからくるイジメなんてなくなると考えたからである。
そんな私は今日初めて吉川颯太君と言う
人物の顔を間近で見る羽目になってしまう。
このきっかけが私の高校生活が大きく変わる事はこの時はまだ知らない。


「おっ!王子様の登場だぜ!」
「吉川っはよー!」

クラスの男子が元気ハツラツなテンションでそう吉川颯太君に呼びかける。



「おはよう」
「あはは俺は王子様でも」
「なんでもないよ(笑)」
「その呼び方やめろよな(笑)」

教室の後ろの扉側から柔らかくて穏やかに
笑いながらクラスメイトの言葉を返す吉川颯太君が教室に入ってきた。

吉川颯太君が教室に入る度いつもどこか、
教室の雰囲気が変わる。
明るく賑やかな教室に一気に変わるのだ。
それは私も凄いと思っていた。
私にはそんな事できない。
羨ましいとも思う。
きっと生まれてからずっと愛されて育ってきたんだろうな。



「颯太君おはよう」
「見て、私今日颯太君の為に髪型」
「変えてきたの!」
「どうかな?」

クラスの女子1人が甘い子猫のような声で
言っている。
私は少し視線を向けてみた。
すごく綺麗な人だ。
入学してから私は本当に同じクラスメイトの顔すらまともに見ていなくて
今日初めて教室全体見渡した。
わぁー今まで俯いたままでも賑やかで明るい教室って思っていたけれど
教室全体自分の目で見ると更に明るく
キラキラした世界に感じた。



「鈴木さん俺の為に髪型変えてきたの?」
「ありがとう」
「とても似合うよ」



「あっ/////」
「ありがとうすごく嬉しい。」


そんな会話が飛び交いながら吉川颯太が
私と美桜の席に近づいてくるのがわかった。

私と美桜の席はちょうど教室の真ん中の列で、美桜は1番後ろの席。
私は前から2番目、そして吉川颯太君は1番前の席なのだ。
そう、つまり私の席の前は吉川颯太君なのだ。
ああ…やっぱり私は吉川颯太君が苦手だな。
中学生の嫌いな男子に似ているような気がする。
キラキラしててモテてて、来る者拒まず。
そんな男子に私は中学生の時告白された。
私は断った。
成り行きでOKとかしたくないし、好きな人がいつか出来た時にその人と付き合いたいと言ってしまったのだ。
まぁ、その後から男子のプライドに私は傷つけてしまったのかはわからないけれど
悪口ばかり言われ、色んなデマも流され
そして私が断った内容も全て暴露され、
私はイジメにあった。
あの時美桜や家族が支えてくれてたから必死で耐えれたけれど
もし、私1人だったらきっと私…
人生にピリオードうってたのかもしれない。
そんな事を思い出してると涙が少し出てきてしまった。
やばっ拭かなきゃメガネが曇っちゃう。
私はメガネを外した瞬間左の肩に衝撃が入ってきた。
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