ビニール傘を差し出したら、結婚を申し込まれました。
◇◆◇


 二コマ目の授業に合わせて大学へ来た私は、大教室の真ん中辺りの席を確保して、ぼんやりと講義を聞いていた。

 服飾関係の授業などは聞いてて楽しいのだが、特に興味はないが必修である語学なんかは本当に眠い。

 眠たい目をこするうちにようやくチャイムが鳴った。

 昼は売店でパンでも買うかな。そう思いながら荷物をまとめていると、ポンと肩を叩かれた。


「よ、夏怜!お前もこの授業取ってたんだな。人多くて気づかなかった」

長谷(はせ)


 長谷竜二。同じ学部で一年生のときから交流のある男子学生だ。髪を明るい茶色に染めてピアスを開けた、いかにもチャラい派手な装いをしている。
 出会った頃は飽きもせず話しかけてくるのが少し面倒だったけど、友達の少ない私とずっと仲良くしてくれるので、今は感謝している。


「今から昼飯だろ?一緒に食おうぜ」

「うん。あ、そうだ。何かパンおごるよ。何がいい?」

「パン?何で?つーか万年金欠のお前がどういう風の吹き回しだよ」

「お金は今少し余裕があって」

「ふーん。何か割のいいバイトでも見つけたのか?」

「ん……まあそんなとこ」


 そんな会話をしながら長谷と並んで歩き、売店へ行く。

 お腹を空かせた学生たちでごった返す売店でようやく目的のパンを買って店の外に出る。今日は天気が良いこともあり、私たちは外のベンチに座って買ったパンを食べることにした。


「なあ夏怜、今日授業いつまである?」


 私が買ってあげた惣菜パンの袋を開けながら長谷が聞いてきた。


「次ので終わり」

「そっか。俺は午後から二つあるんだけどさ、その後どっか遊びに行こうぜ」

「良いよ。今日はバイトもないし」

「よっしゃ。どこ行く?」

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