ビニール傘を差し出したら、結婚を申し込まれました。
長谷は私がハルさんの話をしたことで、自分で言い出しておきながらクレープのことはすっかり忘れていたらしい。しばらくキョトンとしてからようやく思い出した様子で聞いてくる。
「ああ、そうだったな……食いたい?」
「うん。生クリームとキャラメルクリームが大量に入ったやつ。プリン入ってるのとかあるかな」
「そこはイチゴとかじゃねえのな。めちゃくちゃ甘そう」
「甘いは正義」
私としては真剣に言ったのだが、長谷はそれを聞いて「じゃあクレープは買ってくか」と表情をようやく緩めて笑った。
◇◆◇
「……で、まじであったのな。生クリームとキャラメルクリームとプリンが入ったやつ」
持ち帰り用の箱に詰めてもらったクレープを取り出しながら、長谷が呆れ気味に言った。
正確には、「キャラメル&生クリーム」に追加でプリンをトッピング、さらに生クリームを増量したものである。
ちなみに長谷が買ったのはツナサラダだった。私が頼んだのを見てるだけでもう甘いものは十分だ、という気分になったらしい。
「いただきます」
「で、ハルさんとやらはいつも大体何時に帰ってくるんだ?」
「早いときは七時前には帰ってくるんじゃないかな。本社もここから近いらしいし」
私たちが今いるのは、私がハルさんと住むマンションの目の前にある公園だ。
広々と開けていて、設置されている遊具も新しくピカピカしている。いくつもの種類の花や木が植えられており、自然も感じられる。
このマンションに住んでいるようなセレブな子どもたちはここでのびのびと遊んで育つのだろう。
「七時か。なら少なくともあと二時間はかかるな」
「本当に待つ気?」
「当たり前だ」