御曹司は懐妊秘書に独占欲を注ぎ込む
 できればあまり遅い時間に来るのはやめてほしいなと時計を気にしているとインターホンが鳴る。時刻は午後七時前だ。

「すみません、こんな格好で」

 昨日と同様、スーツ姿に手提げ袋を持っている社長に対し私は襟付きパジャマにカーディガンを羽織ったスタイルで出迎える。

 あまりにもオフな姿に驚いたのか社長は意外そうな顔を私に向けてきた。勝手に視線が突き刺さる。

「その、芽衣をお風呂に入れて寝かしつけの都合がありまして……」

 文句を言われたわけでもないのに、つい言い訳する。部下のときではありえないけれど、今はやむを得ない。

「早希には驚かされてばかりだな」

「そんなにすっぴんがひどいですか!?」

 さりげなく名前で呼ばれたことよりも内容に勢いよく返す。たしかに仕事での私しか知らない彼にとって印象はだいぶ違うのかもしれない。

 格好だけではなくメイクも落としていたので、上司云々の前に人に会うのもどうかというスタイルだ。

 そう自覚すると途端に恥ずかしさで頬が熱くなった。力強く首を曲げて下を向き、手のひらで顔を隠す。

「あの、すみません。せめて最低限の化粧くらいは」

 してきますので、と続けようとしたのに顔の前にあった手を取られ言葉をなくす。

「そういう意味じゃない」

 ならどういう意味だろうと浮かんだ瞬間、すぐそばのドアがバンバンと音を立てる。

 おもちゃで機嫌よく遊んでいた芽衣が、私がいないのに気づいたらしくドアのところまで這ってきたらしい。
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