御曹司は懐妊秘書に独占欲を注ぎ込む
 私のワガママだと思って誰にも言い出せなかったけれど明臣さんには言ってもいいのかな? 彼は私よりずっと忙しいのに……。

 不安に駆られそうになった瞬間、頭に手のひらの温もりを感じる。

「わかった。いつがいい? 極力早希の都合に合わせる」

 義務感や面倒だといった感じは微塵もなく穏やかに返される。

「言ってくれてよかった。風呂なら今からでも」

「い、いいえ。また今度で大丈夫です」

 気遣いを見せる彼に、言ってしまった安堵感とほのかな後悔が合わさり鼓動が速くなる。

 自分の希望を口にするのは、今の私にとっては勇気が必要だった。だからすんなりと受け止めてもらえたのが余計に嬉しい。

「……ありがとうございます」

「まだ、なにもしていないが」

 苦笑する明臣さんを見つめていると不意に目が合う。頭に触れていた手がゆるやかに下ろされ頬に添えられた。

「話を戻すが、岡崎のところは考え直してほしい」

 今度は懇願するような言い方だった。ますます意味がわからない。

「なぜですか? 私が千葉航空機の内部事情を話すとでも?」

 ストリボーグとは分野的に競合する場合もあれば業務提携を行うこともあるので関係性はなかなか複雑だ。社長としては、思うところがあるのかもしれない。それにしたって……。

「そんなに信用ありませんか、私?」

「そういう話じゃない」

 複雑な思いで尋ねるときっぱりと否定された。続けて明臣さんは強く言い切る。
< 54 / 147 >

この作品をシェア

pagetop