御曹司は懐妊秘書に独占欲を注ぎ込む
「十分、芽衣を甘やかしていると思いますが……」

 まだ二回しか会っていないけれど、明臣さんは父親として芽衣と向き合って可愛がってくれようとしている。今日もわざわざプレゼントまで用意して。

「早希のことだ」

 こつんと額同士が重ねられ、彼の形のいい唇が動く。

「妻を支えて甘やかすのは夫の役目じゃないのか?」

「……結婚を承諾した覚えはありませんが」

 軽く返すと明臣さんは余裕たっぷりに微笑む。

「いずれそうなるからかまわない」

「すごい自信ですね」

 呆れるのを通り越して笑みがこぼれる。ああ、なんだか懐かしい。彼の絶対的な自信は根拠ないものじゃない。それに見合う努力や日々の積み重ねがあるから揺るがないんだ。

 現に今も芽衣だけではなく私にも歩み寄ってくれている。

『全部ひとりで抱え込む必要はないんだ。少しは支えさせてくれないか?』

 私はカップを両手で持ったまま明臣さんの肩に頭を預け、ぽつりと呟く。

「ゆっくり……お風呂に入りたいんです」

「一緒に?」

 彼の切り返しに瞬時に顔を上げた。

「違います! ひとりでってことです!」

 芽衣と一緒に入ると自分のペースで湯船に浸かれないし、芽衣が寝ているときに改めて入っても起きないか、泣いていないかと気が気じゃなくて結局は落ち着かない。

 私はうつむき気味に訴える。

「それからいい加減、髪も切りたいんです」

 一時保育を利用してもつい仕事で終わってしまって自分のことはいつも後回しだ。贅沢は言わない。その間だけでいい。芽衣を見ていてほしい。
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