御曹司は懐妊秘書に独占欲を注ぎ込む
「服ならいくらあっても困らないだろ」

「こ、困る困らないの問題ではなくてですね……。その分不相応と言いますか。こんな高価な服、芽衣はきっと汚してしまいますし」

 しどろもどろになって反論する一方で、ここはなにも言わずお礼を言っておくべきだったのかと少しだけ後悔する。

「かまわない。俺が可愛い早希と芽衣を楽しむからいいんだ」

 芽衣を抱っこしている明臣さんは器用に片手を離して私の頭に腕を伸ばす。

「その服もよく似合っている」

 さっきのスタッフとはまた違う、彼の声色や表情がお世辞など表面的なものではないと告げる。それくらいはわかるほど、明臣さんと一緒にいた。

「……ありがとうございます。こんなふうにお洒落したのは久しぶりで、嬉しいです」

 だから私も素直に答えた。明臣さんは満足げに微笑む。

「なら、これからは俺のためと思って贈り物はなにも気にせず受け取ってほしいんだ」

「それとこれとは別問題です」

 さらりと懇願されたが、すげなく断った。意外そうな顔をする明臣さんに私は補足する。

「大丈夫です。目に見える物じゃなくても明臣さんの気持ちは私にも芽衣にも十分に届いていますから」

 相手のためになにかしたいと思ってとってくれた行動はもとより、その気持ち自体が嬉しい。

 彼には感謝してもしきれない。

「今度、また一緒に出かける機会があったら、今日買っていただいた芽衣とおそろいの服を着ますね」

 明臣さんに抱っこされている芽衣に微笑むと、つられて芽衣も笑った。きゃっきゃと声をあげ体を揺らしている。
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