御曹司は懐妊秘書に独占欲を注ぎ込む
 残りはすべて預かってもらい、帰る際にフロントで受け取る段取りになった。

 ヒールのある靴を履くのも、イヤリングをつけるのもものすごく久しぶりで、やはり気持ちが高鳴る。

 ネックレスは芽衣が引っ張りそうなので断念したけれど、今日は髪を綺麗にしてもらったのもあって、出産してからこんなにお洒落したのは初めてかもしれない。

 嬉しくないと言えば嘘になる。

「相変わらず、早希は頭がいいな。もっと買ってもよかったんだが」

 どうやら私が一着だと条件を出したことに対してらしい。

「十分ですよ。芽衣とおそろいの服もいつくか選びましたし」

 苦笑して、明臣さんに抱っこされている芽衣と目を合わす。改めて考えると、いつも私が抱っこするのが当たり前だったから、こんなふうに抱っこされている芽衣と顔を見合わせるのもは、今までにあまりない機会かもしれない。

 芽衣は明臣さんに体を預け目を瞬かせ私をじっと見ている。ずいぶんと変身したけれどちゃんとお母さんだってわかってくれているよね?

 苦笑して私は明臣さんに視線を移す。

「私たちのためにありがとうございます」

「早希のためじゃない」

 否定が返ってくるとは思わず、私は目をぱちくりとさせる。

 あ、芽衣のついでってこと?

 自惚れていたかと恥ずかしくなり、慌てて訂正しようとしたが先に明臣さんが言葉を紡ぐ。

「俺がふたりになにか贈りたかったんだ」

 さらに予想外の発言に、私は今度こそ動揺した。
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