みやとロウ。
「いとがさ迷っている事を知ったら
ロウは怒るから」


「怒って、悲しむから」


「理由を知ったら
もっと悲しむから」



……だから、ふゆはロウを呼ぶのはだめだって私を止めたんだ


ふゆもロウが大切だったから


傷付けたくなかったから



「確証はなかった
記憶喰らいを見つけて、退治したからって
いとの記憶が戻るかなんて分からない」


「だけど、もしかしたら戻るかもしれない
そう思って、ずっと探してた」







塞ノ神さまもふゆもいとも
みんな、ロウが大切だから


だから、自分に出来ることを探して
精一杯頑張っていた



「……塞ノ神さま、みやは…
みやはロウに何が出来る?」



ロウはたくさんのものを私にくれた


笑顔をくれた

温もりをくれた

居心地のいい場所を与えてくれた


楽しさを、嬉しさを

優しい時間をたくさんくれた


生きるのが楽しいって思わせてくれた



でも、私はロウに何もしてあげられてない



「みやはそのままでいいよ」


貰うばかりで、何一つ返せていない事に気づいて
小さくうなだれる私の頭を撫でて
塞ノ神さまは柔らかく笑う


「そのままで充分」


「きみの存在が救いになってるよ」



「言葉や行動はそれほど重要じゃない
一番大切なのは、その心。その存在」



「きみがここにいること
傍にいること、笑ってくれること
全部が救いになってるよ」




そんな風に塞ノ神さまは言ってくれたけど





その後、しばらくして




私はロウから告げられた言葉に愕然とすることになる








「みや」







「もうここへは来るな」






はっきりとした拒絶の言葉に
私は呆然と立ち尽くすしかなかった
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