みやとロウ。
涙が落ち着いた頃に塞ノ神さまが来た


私はあれから3日も眠り続けていたらしい

曲霊のいと
直霊のふゆ

ふたりに触れてしまった影響だと言う



塞ノ神さまに夢の事を話せば
悲しそうに微笑んだ



「食べられてしまったんだ」



「記憶を。
『記憶喰らい』というあやかしに」



「人の、その人が一番大切にしている記憶を食べるんだ
特別大切な記憶を」



塞ノ神さまは昔を思い出すように
目を伏せて言葉を紡ぐ



「いとはね、忘れられていても
変わらず優しくしてくれるロウを見て
思い出したいって思ったんだ」



「とてもあたたかくて優しい
このひとと過ごした時間を思い出したいって」



「ロウが時々
自分の見ていない所で悲しそうにするから」



「それを見たら
どうしてか、とても胸が苦しくなって
自分の方が泣きそうになったから」



「だから、なんとか思い出そうと頑張った
死ぬ直前まで。そして、死んだ後も」



「だけど、だめだった」



伏せていた目を上げ、塞ノ神さまは私を見る



「時間がなかった
いとと、ふゆ
これ以上ここにいたら
ふたりは『光の先』に行けなくなってしまう」



「間に合わせたかったけど
記憶喰らいは隠れるのが凄く上手くて
見つけられなかった」



「……塞ノ神さまが、時々森にいないのは
記憶喰らいを探してたから?」



「ロウには内緒だよ」
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