今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
医学生でありながら一端の意見を述べる俺を、父の友人たちは将来が楽しみだと褒めてくれたけれど、おそらく次期院長である俺への太鼓持ちがすでに始まっていたのだろうと思われる。

とはいえ、おかげさまで、躊躇いなくメスを握れるふてぶてしい研修医となったわけだ。

しかし、実際の業務は実に地味だった。

初めはうしろから見学しているだけ。上級医師の指導のもと、病棟の患者の回診に付き添ったり、術前、術後のカンファレンスに参加したり。

ごくごく稀に、簡単な手術の第二助手あたりを務めさせてもらい、術野を開くための鈎を握らせてもらうとか。

周りの研修医はそれだけでも緊張していたものだが、俺は早くメスをにぎりたくて仕方がなかった。

俺はポリクリ――学生時代の臨床実習のことだ――とたいして変わらないなぁなんて感じながらも、もちろんそんな本音は隠しつつ、謙虚で真面目な研修医を演じていたわけだが。

修行のつもりであえて実家を離れ、須皇総合病院に勤めるようになり四カ月。

生で患者と触れ合う機会の増えた俺は、想像以上に医者が感謝されない職業であることを知り驚いた。
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