今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
親孝行なんて意識した上での結婚、妊娠じゃなかったけれど、結果、母が喜んでくれたのでよかったと思う。

悠生さんには感謝をしてもし足りない。たくさんの選択肢を持ちながら、私を選んでくれた人。

『強くてたくましい君が好き』って言ってくれたっけ。

たぶん、そのままの意味ではないだろう。さすがに松葉杖を壊すようなたくましさは、求めていないはずだ。

彼なりの理由があるのだと思う。いつかそれをきちんと聞かせてもらえたら――そう思いながら、母との通話を終わらせた。



六月下旬、季節は梅雨に入ったばかり。蒸し暑いかと思えば肌寒い日も多く、雨は降ったり止んだりを繰り返している。

その日、会社を午前休して妊婦検診に出かけようとしていた私は、玄関で置きざりにされている彼の傘に気がついた。

悠生さんは、よほど急いでいるときでもない限り、徒歩で病院へ向かう。

歩いて五分程度の距離であるため、いちいち車を出して駐車場に止める手間を考えると、車でも徒歩でも大差ない。
< 229 / 275 >

この作品をシェア

pagetop