今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
結局、ストレッチャーに寝かされた悠生さんの手を、私は強く握った。

「……杏は……無……事……?」

喉の奥から絞り出すような声に、私は必死にこくこくと頷く。

私は無事だ。赤ちゃんも無事。悠生さんが庇ってくれたから。

でも、そのせいで悠生さんが傷ついてしまうなんて、耐えられない……!

「悠生さん! 悠生さん……!」

縋りつく私を引き剥がすように、看護師にうしろから羽交い絞めにされた。

「あなたも階段から落ちたんでしょう? 検査をしなくては……!」

「やだ……! 悠生さん!」

彼を乗せたストレッチャーが救急の処置室へと消えていく。

最愛の人から引き離されてしまった私は、涙がぼろぼろとこぼれて止まらなくなった。

やがて館内放送が鳴り響き、コードホワイト――暴力事件発生のスタットコールが遅ればせながら発せられた。

しばらくすると、スタットコールは解除され、同時に鳴り響いたパトカーの音で、長門さんが警察に連行されたのだと知った。


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