今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
「最悪の展開として、大動脈が破裂すれば心停止や出血性ショックで急死する可能性もある。とにかく一刻を争う状況だ」

医療の進歩により、最近では大きく胸を開けて手術をしなくても、小規模の切開で手軽に処置できるパターンが増えたとか。

だが、今回の場合は患者の容態が思わしくなく、合併症も併せた複合的な手術になるから大がかりな開胸手術をするそうだ。

心臓を止めたり動かしたり……冷静に考えるとなんて恐ろしいことをしているんだろう。まるで神のなせるわざだ。

「とはいえ、人工心肺を使うにはリスクもある。重い障害が残る場合も。危険と隣り合わせの手術なんだ。でも、あの患者を救うにはこれしかない」

ハイリスクハイリターンの大手術。失敗したらもちろん――。

ぞくりと背筋が震え、脚が竦んだ。

今、目の前にいる患者は、もしかしたらこのまま目を覚まさないかもしれない。

そんな緊張感を胸に医師は患者と向き合っているんだ。

小窓の奥を見つめると、中央に西園寺先生が立っている。

医師はみなマスクやキャップ、ゴーグルをつけていて、遠目からでは誰が誰だかわからない。けれど、ひと際背が高い彼はすぐにわかった。
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