碧色の恋。
「あ、の、お母さんがまた…作り過ぎたから…って」
トートバッグを七瀬くんに渡すと、ちょっとだけ七瀬くんが笑ったような気がした。
「さんきゅ、おばさんの味付け好きなんだよね」
お母さんの味を褒めてもらえるなんて思ってなくて、何故か私まで嬉しくなった。
「…じ、じゃあ私はこれで!」
「ご馳走様です、って伝えておいて」
「う、うん!」
七瀬くんとちゃんと顔を合わせて話せるのはこういう時だけだ。こういう時だけは、普通に会話できるのに。
「渡してきてくれた?」
「うん、七瀬くん喜んでたよ」
「やぁね七瀬くんだなんて、碧くんって呼べばいいのに」
……そう呼べたら良かったんだけどね。七瀬くんは私と幼なじみであることを知られたくないみたいだから…。