李世先輩は私のことを知り尽くしている?

不協和音

総合の時間が終わって、帰りの連絡の前にお手洗いに行こうと席を立った。


廊下を歩いていると、反対側から見慣れた女の子が歩いてきた。



「あ……つぼみちゃん」



私の声に気づいたつぼみちゃんは、ふと顔を上げ、私を見る。


そして、冷たくにらみつけてきた。


私は話しかけなければよかったと後悔したくなる気持ちをぐっと抑えて、一生懸命口を動かす。



「あ、あのね。この前、たまたま和くんに会ったの。『つぼみちゃんは元気にしてる?』って、気にしてたよ」


「そう」




つぼみちゃんは再び視線を落とすと、すたすたと歩き去ってしまった。



福井つぼみちゃんは、中学生のときの親友。


一緒の高校に受かって、すごくうれしかったのに……。



高校に入学して、気づいたら、こうして冷たく接されるようになっていた。


気のせいだって思いたかったけど……やっぱり、気のせいじゃないよね。


私、なにか気に障るようなこと、しちゃったのかな……。


でも全然、心当たりはなくて。


黙ってつぼみちゃんの後ろ姿を見守ることしかできなかった。


本当はもう一つ、自然教室のことで、話したいことがあったのに……。
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