ハージェント家の天使

「かわいいおねえさんだ！」
「う、うん。そうだね……」
　7、8歳くらいの女の子は目を丸くして、恥ずかしそうに男の子達の後ろに隠れた。
　モニカは女の子に目線を移すと、微笑んだ。
「私ともお友達になってくれるかな？」
「いいの？ わたしたちと？」
「勿論！」
「やったー！」と子供達はモニカを囲んだ。男の子の後ろに隠れていた女の子も、笑いながらモニカの側に寄って来てくれたのだった。

「やれやれ。これは妬いてしまいますね」
　マキウスが苦笑していると、「誰か〜！」と男の声が聞こえてきた。
「どうしましたか？」
「あっ！ マキウス様！」
　マキウスの後ろから走ってきた若い男は、マキウスの姿に気づくと走り寄ってきた。
　マキウスの前で立ち止まると、肩で息をしていた。
「あっちで、この街の奴らと強盗が揉めていて……。それで……」
　マキウスは男が指差した方を確認すると、顔を引き締めた。
「私が行きます。貴方は広場に出て、巡回中の騎士団か、いなければ騎士団を呼ぶように店の者に伝えて下さい」
「はい！」と言うと、男はモニカ達の横を通って走り去って行った。

「モニカは子供達とここに居て下さい」
　それだけ言うと、マキウスは男が指差した方に走って行ったのだった。
「おねえさん。ぼくたちもいこう」
「うん。あたしもきになる！」
「ええ……」
　子供達に連れられて、モニカもマキウスの跡を追いかけたのだった。

　モニカが子供達と共にやってくると、そこには怪我をした貧民街の住民を庇うように、マキウスが立っていた。
　マキウスが向き合っているのが強盗だろう。頭からカーネ族特有の耳が出ている以外は、全身が黒色の布に包まれていたのだった。

「へっ！ 素手で俺たちに敵うのか？」
　強盗は3人いた。3人はそれぞれナイフや短剣を構えていた。
　一方のマキウスは素手であった。今日は休みだから、帯剣していなかったのだった。
「あなた達など素手で充分です」
「はっ！？ 俺達を舐めているのか！？」
　男達はマキウスに向かって行った。マキウスは男達の攻撃を難なく避けると、怪我をしている住民に向かって叫んだ。
「今の内に、早く逃げなさい！」
「けど……」
「早く！」
　マキウスの叫び声に、近くにいた他の住民が怪我をした住民を連れて行った。
　その間に、マキウスは強盗の1人の腹を蹴り飛ばした。